7/20の朝日新聞、トップ記事の見出しはこうだ。

遺伝子組み換えに追い風 食糧高騰・温暖化が均衡破る

 で、記事はこう書き出している。

長く白眼視されてきた遺伝子組み換え(GM)作物に、追い風が吹き始めている。

 GM技術の知的所有権を独占し、世界の主要作物の種子支配を狙っていると批判されてきたモンサント社(米国)は6月、世界的な食糧高騰や気候変動に立ち向かう「貢献策」を公表した。

 ・・・もうすこし言いようは無いのか。

長く白眼視されてきた遺伝子組み換え(GM)作物」

GM技術の知的所有権を独占し、世界の主要作物の種子支配を狙っていると批判されてきたモンサント社

 こういう枕詞をつけて、物や会社に対する固定的なイメージを読者に植え付けるものの書き方は、著しく不公平なやり方だ。たとえば、

コラムで法務大臣に”死神”と言う別名をつけて、良識ある市民の批判にさらされている朝日新聞社

 自分の会社をそう呼ばれたら、このトップ記事の執筆者はどう感じるだろう。事実として遺伝子組換え作物が「長く白眼視されてきた」にせよ、食料高騰・温暖化が遺伝子組換え作物の普及に追い風になっている情勢を伝えるのに、このような書き方をする必要はない。

 ちなみに、私はモンサント社に知人は居るが利害関係は全く無い。お歳暮・お中元はおろか、ボールペン一本貰ったことは無い。モンサント社を弁護する理由は無いが、メディアの不公平な報道には抗議する。

 私は朝日新聞を購読しているし、複数年まとめて契約している。しかし、契約期間が切れたら私は二度と朝日新聞を購読しない。ここに宣言する。

 読売新聞のオーナーが変わったら即日読売新聞を購読するかもしれない。
読売新聞は、取材記者が高圧的で失礼な取材態度で知られている(業務でなければ取材協力は絶対にしたくない)。しかし、医療や科学関連の記事の品質は高い。

 製品としての品質がよければ、企業姿勢には何とか目をつぶってやっても良い。しかし、記者やオーナーが如何に品行方正でも、製品の品質が低いのでは話にならない。



 さて、署名記事でこのような書き方ができるというのは一種賞賛に値するかもしれない。腹立ち紛れにどうでも良いことを書いてしまったが、折角なのでこの記事では書かれていない情報も書いておこう。

植物の遺伝子組換え技術の特許について。

 特許というのは、投資をして技術開発を行なったものに対して正当な対価を認めて報いるための制度だ。したがって、一定年限(存続期間という)は保護するが、それを過ぎれば特許の内容は社会全体で共有するべき知的財産となる。

 存続期間の間、特許を取得した者の許諾なくその技術を使用してはいけない。その期間は20年あるいは25年間(農薬分野など)と決められている。植物の遺伝子組換え技術に関する特許は、多くが1980年代に成立している。従って、多くの技術がそろそろ期限が切れているか、期限切れを迎えることになる(ソースは特許庁)。

 つまり「GM技術の知的所有権を独占し、世界の主要作物の種子支配を狙っている」という表現は、先駆者として遺伝子組換え作物を開発してきた企業が獲得して当然の、国際的にも認められている独占権に対する批判である。知的財産権の独占を批判をするならば、特許と言う制度の是非も問うべきではないのか。

 作物の種子だって製品である。それが良い製品であれば普及するし、そうでなければ企業がいくら市場を独占しようとしてもメリットの無い製品は普及しない。「世界の主要作物の種子支配を狙っている」としても、それは非常に高い目標に向かって企業努力を積み重ねているという意味だ。企業の目標は魅力的な製品で消費者をとりこにして、より収益を高めることなのだから。

# 大体、具体的にはどんなプランを立てれば、ある市場占有率を達成できるようになると言うのか。

 なお、モンサント社は昨年9月にDow Agroscienceと互いの技術を持ち寄って新しいスタック系統を開発することで合意している。深読みすると、組換え技術の特許切れによってジェネリック医薬品のように先行製品とよく似た後発品種がぞろぞろ出てくる事態に備えて、品種の幅をより広げておこうとしているようにも見える。今回の件も企業買収をしようと思えばできたのかもしれないが、互いの独立性を残した方がメリットがあると言う判断での協業だろう。

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