リンク先はこちら

 調査対象9,192のうち8,000人が中学、高校の先生なので、主に教員対象の調査という趣。

 報告書のイントロダクションには次のようにある。・・・が、一言申し上げたい。この調査担当者も、現状認識を改めた方がよい。

1.はじめに

 近年、地球規模で起こっている砂漠化等の環境問題は、世界的な食糧事情の深刻化をもたらす要因となっており、多くを輸入に頼っている我が国の食料安全保障上に大きな影響を与える可能性が高い。

 地球温暖化に伴う食糧問題としては、乾燥や塩害等の劣悪な環境に強い作物、病害虫に強い作物、単位耕作面積あたりの収量の多い作物等を開発することが重要である。

 世界的には、こうした機能を有する作物とえいて遺伝子組換え作物(以下「GMO」という。)が開発され、既に数カ国で実用化が始まっている。

 一方で、我が国はイネゲノム解析をはじめとする優れた育種技術を擁しており、それの活用は我が国の食糧問題のみならず国際的な貢献につながっていくことが期待される。まずは、GMOに関する技術の内容、安全性、有用性、生物多様性など環境面への影響等に関する情報の発信を行い、国民理解を得ることが必要である。

・・・以下略

 1パラ目、地球環境の悪化が食糧安保に脅威となる可能性はその通り。2パラ目、環境悪化に対応する組換え作物育成の重要性もその通り。3パラ目、「世界的には、こうした機能を有する作物とえいて遺伝子組換え作物(以下「GMO」という。)が開発され、既に数カ国で実用化が始まっている。」というが、「こういう機能」に、「病害虫に強い作物」が含まれるのであれば、Btコーンを栽培している国は数カ国では効かない。ISAAAの公表によれば16カ国で商業栽培されている。一方、ストレス耐性作物はまだ実用化水準にない。

 一方、既に日本がおよそ1,200万トン程度輸入している可能性がある遺伝子組換え作物については一切ふれずに、将来的な期待に備えて国民理解を得ることが必要、と言う議論は理解に苦しむ。
 現状で日本の食生活が遺伝子組換え作物に大きく依存していることに目をつぶっていてはいけない。
 毎日のように輸入されているであろう遺伝子組換え作物の「技術の内容、安全性、有用性、生物多様性など環境面への影響等に関する情報の発信を行い、国民理解を得ることが必要である。」、とこのお言葉をそっくり贈ろう。

 些末だが、イネゲノム解析は育種技術ではないことを最後に申し添えておく。
 アンケートの集計結果を見ると分かるが、品種改良やその技術を理解していない人は教員でも30%は居る。ことほどかように、品種改良に対する国民理解の浅さがいみじくも露呈してしまっているのは悲しむべきことである。

 続編は明日以降あらためて。初歩的なミスで実験を失敗してしまって己に腹が立った日、記す。

人気blogランキングへ←クリックしていただけますと筆者が喜びます!