RNAウイルスベクターを使用したiPS細胞の作成が産総研から公表された。

がん化しにくいiPS細胞作製に道、産総研が新タイプ

 京都大の山中伸弥教授が開発した新型万能細胞(iPS細胞)に近い細胞を、山中教授とは異なるウイルスを使って作ることに、産業技術総合研究所の中西真人(まひと)・研究ラボ長らが成功した。

 がん化しにくい安全なiPS細胞作製に結びつくと期待される。

 25日、都内で開かれたシンポジウムで発表した。

 山中教授の手法は、3〜4個の遺伝子をレトロウイルスを使い皮膚細胞に導入してiPS細胞を作製する。しかし、細胞のDNAにウイルスが組み込まれるため、がん化などの危険性が指摘されていた。

 中西ラボ長らは、細胞内に長期間とどまり、DNAを傷つけない新型のセンダイウイルスを開発。このウイルスを使い、3個の遺伝子をマウスの皮膚細胞に導入したところ、遺伝子の働き方や細胞内のたんぱく質がiPS細胞と似た状態になった。

 中西ラボ長は、センダイウイルスを容易に除去できる方法も開発し、「今後、様々な細胞に変化できる万能性を確認したい」としている。

(2008年7月26日03時06分  読売新聞)

 レトロウイルスでがん化がおこるのであればセンダイウイルスを使えばいいのに、というのは誰しも思いつくところ(関連する昨年11月のエントリーはこちら)。効率はどのくらいなんだろう。また、「センダイウイルスを容易に除去できる方法」というのが味噌ですね。また一歩前進という感じです。次は、ヒト細胞ですね。

 あと、「3個の遺伝子」を一つのベクターに入れられれば感染効率の3乗倍ほど効率的なのですが、センダイウイルスベクターではあまり大きなサイズのインサートは入らないような。かといってコロナウイルスを使うのはちょっと・・・。

 またDNAウイルスに逆戻りしても良いのであれば、哺乳動物細胞では増殖できないバキュロウイルスでも発現ベクターには使えますし、大きな遺伝子断片が入れられます。
 ネガティブセレクションができるマーカー遺伝子を入れておけば、ベクターの除去もできるかもしれません。

 そうこうしているうちに、薬剤でiPS細胞を誘導すると言う話もちらほらあったような。

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