食品安全情報blog経由。

この件、食品安全委員会の評価が始まるまで静観しようと思っていたのですが、新しい論文が出たので、とりあえずメモ。

Tyl, RW et al. Two-Generation Reproductive Toxicity Study of Dietary Bisphenol A in CD-1 (Swiss) Mice. Toxicological Sciences 2008 104:362-384; doi:10.1093/toxsci/kfn084

プレスリリースはこちら

  • 供試材料はマウス二世代(国立医薬品食品衛生研究所の試験はラット。こちらに良いまとめがあります。)
  • ビスフェノールAの用量は0, 0.003, 0.03, 0.3, 5, 50, or 600 mg BPA/kg/day
  • 要は高容量とポジコンでは影響があったものの、低容量では成体、産仔とも異常なしとのこと(There were no BPA-related effects on adult mating, fertility or gestational indices, ovarian primordial follicle counts, estrous cyclicity, precoital interval, offspring sex ratios or postnatal survival, sperm parameters or reproductive organ weights or histopathology (including the testes and prostate))。

 国立医薬品食品衛生研究所の試験でも発情周期を指標としていたようですが、こちらでは発情周期には影響なしとしています。


 ヒトのビスフェノールAの吸排に関するEFSAのAFCパネルの意見
も公表されたことですし、食品安全委員会の判断の参考資料となることは間違いないでしょう。

 食品安全委員会のリスク評価としては、結局、現行の規制値で十分と考えるか不十分と考えるかでしょうが、以前のエントリーにも書きましたが、げっ歯類で何らかの影響があると言うことと、ヒトでリスクがあるということの間のには結構大きな開きがあります。

 勝手な予想ですが、落としどころとしては、”科学的には影響は無いとまではいえないかもしれないが、あっても軽微。現行基準値でも十分”として、環境ホルモンの危険を警告する国立医薬品食品衛生研究所等の一部の人々の面子を守りつつも、社会的な混乱を起こさないように配慮するというところでしょうか。それとも、毒性部が大々的にテレビで流すなど研究成果の意図的リーク(たしか、機関としてのプレスリリースはしてないよね)をしたにもかかわらず、”この試験方法では確かなことはいえない”とダメだしをされるでしょうか。

# 白黒付けないですます、という対応は後々禍根を残すことが多いんですけどね。

 EUやカナダでは国際的な対応も二分しているところですから、”低用量効果”を巡る食品安全委員会の今後の議論に注目です。

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