7/30毎日新聞より。

イネ:古米臭少ない品種、苗の段階で選別 作物研が開発

 長期保存しても古米臭の少ないイネの品種を苗の段階で簡単に選別する技術を、農業・食品産業技術総合研究機構作物研究所(茨城県つくば市)が開発した。
長期保存に耐えられる新品種の育成を効率的に進めることができるという。

 古米臭は、玄米の中にある脂質の一種が、リポキシゲナーゼ(LOX)という酵素で酸化されることで発生する。この酵素は3種類あり、最も強く働くLOX3が玄米中に含まれるかどうかで選別していたが、収穫後でないと分からなかった。

 研究チームは、世界中から収集したイネ93品種の中からLOX3を持たないタイの在来種を発見。DNAの塩基配列を調べ、日本の在来種「日本晴」のLOX3遺伝子の塩基配列と一つだけ異なっていることが分かった。LOX3がないと、古米臭成分は3分の1から5分の1程度に減るという。

 研究チームは、塩基配列の違いを検出する従来方法を応用。
苗の葉1枚でLOX3遺伝子の有無を判別できる2通りの方法を編み出した。従来の選別作業は、田植えから約8カ月かかっていた。

 鈴木保宏・米品質研究チーム長は「香りを重視する酒米の品種改良や、貯蔵倉庫の温度設定にも役立つかもしれない」と話している。【石塚孝志】

 リポキシゲナーゼ(LOX)欠損の作物は何もイネに限らない。既に実用化されて品種になった青臭みのないダイズや、ビールにした際に保存中の品質の劣化の少ない開発途上のオオムギなど、幾つかの変異体がある。

 選抜方法も、ダイズの場合は子葉を半分に切ったもので酵素活性の検定ができる分、今回のDNAを使用した選抜法より手っ取り早い (欲しいのは劣性ホモなので選抜効率はあまり良くないが)。イネの場合はPCRを使うのだから、育苗するまでもなく玄米半粒で検定できると思うのだが・・・・どうなんだろう。

 ちなみに、今回のプレスリリースでもLOX3と書いているように、イネでもオオムギでもダイズでも、LOX遺伝子は複数ある。耐病性に関与しているものもあるが、大抵のLOXは生体内でどんな機能を担っているのかははっきりとはわからない。LOXは脂肪酸を酸化させて臭い物質を生成するので(大抵は望ましくない臭いだ)、品質面では無いほうが良いことが多い。しかし、本当にLOXがなくても生存に差し支えないのかどうか・・・。

 まあ、明らかなベネフィットと、潜在的で不明確なリスクを比較するとどのような選択をするべきかは明らかではあるが。いずれは、この成果を生かして貯蔵性の良い米が主力品種になっていくのかもしれない。

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