朝日新聞より。

記憶の仕組みにアスパラガスのアミノ酸 岡山大が解明

2008年8月20日9時18分

 アスパラガスに含まれるアミノ酸の一種「アスパラギン酸」が、神経細胞で情報伝達にかかわる仕組みを、岡山大大学院医歯薬学総合研究科の森山芳則教授(生化学)らが突き止め、米科学アカデミー紀要電子版に発表した。この仕組みの異常で、発達障害などが起こる難病になる可能性も示され、記憶・学習の仕組み解明につながりそうだ。

 記憶にかかわる脳の海馬で、アスパラギン酸神経伝達物質グルタミン酸とともに存在することなどは知られていた。大学院生の宮地孝明さんらは、細胞内でアスパラギン酸を運ぶたんぱく質を特定し、小胞型興奮性アミノ酸トランスポーター(VEAT)と名づけた。

 VEATは、神経細胞のつなぎ目にある神経伝達物質を蓄える袋に、アスパラギン酸を運びこむ。蓄積されたアスパラギン酸は、この袋から分泌されて神経伝達物質になるとグループはみている。

 これまでVEATは別の働きで知られており、その異常で、幼児期から精神発達や運動障害が起こる「サラ病」になることがわかっていた。今回の発見で、サラ病は神経細胞の情報伝達の異常で起こる可能性が示された。

 森山教授は「グルタミン酸だけでは説明が難しい情報伝達の仕組みが、アスパラギン酸の働きを調べることでわかるかも知れない。認知症などの薬の開発につながる可能性もある」と話している。(赤木基宏)

 神経細胞内でアスパラギン酸の蓄積に関わる膜タンパク質が同定されました、という研究。
小胞型興奮性アミノ酸トランスポーターと言う名前なので、刺激に応答してアミノ酸の運搬の状態が変わるのでしょう。しかし、この研究で明らかになったのは、神経細胞にある、とあるタンパク質の機能の一端であって、「記憶の仕組み」ではありません。その点でもこの見出しは不適切です。

 さらに私が反応してしまったのは、このトンチンカンな説明です。「アスパラガスのアミノ酸」・・・繰り返します。
「アスパラガスのアミノ酸・・・こう言い換えて、アスパラギンを説明しようとしています。

 へー、アスパラギンもあるのに、という冗談はさておき、この見出しを付けた方は、アスパラギン酸が肉でも魚でも卵でも、多くのタンパク質にごく普通に含まれていることをご存じないのでしょうか。こういう無理矢理な言い換えは、不正確な上にかえって正しい理解を妨げるので、やめた方が良いと思います。

 物事をわかりやすく説明するのは大切ですが、わかりやすい、ということは複雑な現実から多くの情報が捨て去られていると言うことでもあり、正確さには欠けます。
 往々にして単純化の匙加減が難しいのですが、科学の世界では、もうどうにもこうにもそれ以上の単純化や言い換えのしようがないものがあります。例えば元素の名前や惑星の名前がそれです。
 アミノ酸の名称も特定の構造を持った分子に固有の呼び方ですので、○○の様なもの、という喩えは意味を持ちません。

人気blogランキングへ←クリックしていただけますと筆者が喜びます!