古い論文ですがオープンアクセスになっているのでメモ。

Micro-homology mediated PCR targeting in Saccharomyces cerevisiae.
P Manivasakam, S C Weber, J McElver, and R H Schiestl
Nucleic Acids Res. 1995 July 25; 23(14): 2799– 2800.

 PCR産物両末端の酵母ゲノムとの相同領域の長さを変えて、相同組換えの頻度を測定している。

 相同領域の長さ30 bpと25 bpで劇的に効率が上がる。45 bp以上は600bpでもあまり変わらない。
 ホストの株によっても効率が結構違う。導入した遺伝子の違いによる影響は見られない。それが、DNA断片導入の効率なのか、細胞内での相同組換えの効率なのかは、この実験系では切り分けできないが、長さに対する依存性が高いようなので、おそらくは相同組換えの効率によるものだろう。・・・だとしたらホストの違いはどうのように影響しているのか?謎。

 せめてよく使うプラスミドで、それぞれの株の形質転換効率を調べておいてくれたらな、と思う次第。
 この実験系では相同組換えによるUra3+株と非相同組換えによるUra3+株の合計が母数になるので、DNAの導入効率は分からない。

 もっともこの実験ではターゲットが核ゲノムの遺伝子なので、マルチコピーのプラスミドの場合は組換え体が取れてくる頻度は数十倍程度は上るかもしれない。

 なお、この論文は1995年のものなので、相同組換えへのMRXの関与が見つかる前のものだと思います。その後のRad54による二本鎖DNA領域への進入とゲノムの相同領域の長さとの関係を直接調べた仕事はあるのだろうか?それとも、今でもまだそこまで行っていない?

 実験的には30−40 bpの相同領域を作っておけば高頻度の組換えが起こることがこの論文から分かるので、実用上はそれでよしとしましょう。地味だけど貴重な基礎データです。まえもってこれを読んでいたらなぁ・・・あと5 bpプライマーを延ばしておいたのに。

 しかし考えてみると、線形にしたプラスミドとPCR断片の間の相同組換えでは、一本鎖の3'突出末端同士の会合が起きている場所でフォーク構造をとっているんだろうか?この論文で行ったような、ゲノムDNAと二本鎖DNA断片の間の相同組換えとは若干様相が違う気もする。

# ちなみに、上記で言うホストとは飲食店従業員の方とは関係ありません。

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