朝日新聞より。


甘い?辛い?いや「カルシウム味」 米で第6の味発見か

2008年8月25日11時26分

 【ワシントン=勝田敏彦】
ペンシルベニア州にあるモネル化学感覚センターのチームがカルシウムを味わうための遺伝子をマウスで確かめ、米化学会で発表した。
「カルシウム味」が第6の基本味である可能性もあるという。

 遺伝的に系統が異なる40種類のマウスにカルシウムを含む溶液を飲ませたところ、多くが飲むのを嫌うなか、がぶ飲みする系統が見つかった。遺伝子を比較した結果、カルシウムを味わうのに使う二つの遺伝子が特定された。

 人間の舌は、甘み、塩味、酸味、苦み、うまみという五つの基本味を感知する。
今回のマウスの遺伝子に似たものは人間にもあることから、研究チームは「カルシウム味」が基本味の一つである可能性もあると考えている。

 研究チームのマイケル・トルドフ博士は「カルシウム味は苦みに酸味が少し加わったようなものだ。適切に表現する言葉はなく、『カルシウムっぽい』としかいいようがない」と話している。

 ”『カルシウムっぽい』としかいいようがない”という表現、いいですね。
 ストレートな感覚を無理矢理何かにかこつけると大抵失敗します。たとえば、「まったりとしていて、少しも嫌みじゃない」とか・・・。

 結局、カルシウム・イオンの味は、野生型のマウスにとっては好ましい味では無いようですね。たまたま、変異のある系統だけがぶ飲みするということは。

 ちなみに、手近なところで、カルシウムイオンの味を確かめたい方は、試薬棚の塩化カルシウム・・・ではなく、市販のミネラル・ウォーターの中でも、硬度が最高クラスのContrexを飲むと良いでしょう(多分)。私は、これを飲んだ時は軟水で口を漱ぎたくなりました。味はありますが、それが「カルシウムっぽい」かどうかは保障しかねます。

 味覚といえば、ヒトではフェニルチオカルバミド(PTC)に対する感受性の違いが有名です。苦みのレセプターの遺伝子の一つにある変異によって、PTCに対する感受性が無い人がいると言う現象で、”味盲”(正確には”PTC味盲”)という差別的な言葉で呼ばれています。
 特定の物質による苦みを感じないというだけで、別に味覚が全然ダメという訳では無いのに酷い用語です。

 もっとも、味覚の受容体も臭いの受容体同様に、複数のセンサー(受容体)が複数の物質に反応して、全体的な反応パターンとして味覚を感じているので、センサーが一つ欠けているヒトと、そうでないヒトで反応パターンが少々違うかも知れません。とはいえ、味覚は年齢、生活習慣や体調でも変わるものなので、そう言った変動の中では、遺伝的な違いによる影響はあったとしても大した違いではないかもしれません。

 いずれにしても、味覚や嗅覚には測定できる外部基準がありませんので、私の感じる「カルシウムっぽい」味と、あなたの感じる(あるいは感じない?)「カルシウムっぽい」味は比較のしようがありません。

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