福田総理辞任のニュースが飛び込んできた。短命な政権だった。次の総理も難しい国会運営を強いられるのは明らかだけど、景気対策だけはしっかりやっていただきたいところ。補正予算はどうなるのだろう?

 折りしもアジアの株式市場は全面安の展開で、日本の株式市場も混迷を深めることは必至。

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 さて、8月27日から、ひっそりとカルタヘナ法、研究目的第二種使用にかかわる告示の改訂についてパブリックコメントが募集されている。

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 改定の内容は、ウイルスの追加と名称変更、学名の修正など、あまり大規模な改訂では無い。 幾つか気になる点があるので、メモしておく。

  1. サルモネラ属細菌は原則クラス2、クラス3にSalmonella paratyphi A型、Salmonella typhi、クラス1に、Ames testに使用するS. typhimuriumのTA98株及びTA100株はクラス1に位置づけてあるのは、改訂されずにそのまま。・・・ですが、このところのSalmonella属細菌の分類では、この学名はもはや推奨されていない。一応、スタンダードな学名を記載した”The Approved Lists of Bacterial Names”には残されているので使用することはできる。しかし、最近の分類では、パラチフス菌(Salmonella paratyphi A型)は"Salmonella enterica subsp. enterica serovar Paratyphi A"としてS. entericaの亜種の一つに統合。チフス菌も”Salmonella enterica subsp. enterica serovar Typhi ”になった。 そのへんの命名についてはこちらのホームページに詳しい。 その結果、一つの種内に病原性の異なる血清型が含まれる状況になっており、ウイルスのワクチン株とそうでない株の関係のように、serotypeやgenotypeを決めないと実験分類がわからないという、若干困った状況。
  2. 自立増殖性ウイルスの中で、大臣確認が不要なものをリストアップした別表3が改訂されている。 これをいじる場合に気をつけないと、これまで大臣確認が不要だった物にいきなり規制がかかることがあるので要注意。
  • (旧)「5 ファージ及びこれらの誘導体(別表第一に掲げる宿主のうち細菌を自然宿主とし、哺乳動物等に対する病原性を付与しないものに限る。)」→「5 バクテリオファージ及びこれらの誘導体(哺乳動物等に対する病原性を、細菌に持たせないものに限る。)」とある。
  • 基本的には変わらないのだが、以前から加えた方がいいのにな、と思っていたものが入っていない。バクテリオファージの宿主であるバクテリアの範囲を真性細菌と考えるとアーキアを宿主とするファージはこれに入らない。また、藻類を宿主とす組換えファージも大臣確認が必要なままだ。分類学上の立場が三界説だというなら話は別で、藻類を宿主とするウイルスも植物ウイルスに入れられるのだが、今時この考え方はかなり厳しい。藻類自然宿主とするファージは、別にリストアップした方がよいだろう。ミクロキスティスなどアオコに寄生するファージを材料とする研究者は、それらのファージがアオコにしか寄生しないという論文等を添えて要望を出しておくべきだろう。また、真菌類を宿主とするウイルスについても大臣確認は必要。
  • ちょっと気になるのは、酵母のキラー因子は、「外被を持たない二本鎖RNAウイルス」と言われているが、これも大臣確認が必要(それってウイロイドじゃないのか?どうなの、酵母なヒト)。

 実際のところ、哺乳動物等への病原性等の特段のリスクが無いにも関わらず大臣確認が求められるウイルスはまだ結構有るように思う。昆虫や植物のウイルスは自律増殖性でも大臣確認が要らないのだから、古細菌、真菌、藻類のウイルスについても同様の扱いをしても良いのではないだろうか。

# 魚類のウイルスはちょっと微妙ですが。

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