横浜市大、理研千葉大グループの成果です。
シトクロームオキシダーゼP450の一種”CYP88D6”をカンゾウから単離しました(カンゾウ=甘草です。肝臓ではありませんのであしからず)。

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になっていますので、ご家庭でも手軽に読めます(・・・読まないか)。

 グリチルリチンはトリテルペン・サポニンの一種。生体内での合成経路には大方の目星は付いていたところなので、触媒する酵素がシトクロームオキシダーゼ P450の一種であることは最初から予想できたでしょう。問題はグリチルリチンでは糖鎖の付いている特定部位について、その前駆物質で酸化しておく酵素が見つからなかったこと、だそうです。この論文では、単離した遺伝子の構造からP450であることを確認したもの(”CYP88D6")について、試験管内と組換え酵母とで酵素活性を確認しています。


# 遺伝子の単離自体は、力仕事なので動機と財力があれば多くの研究室でやれるだけの潜在的な能力はあるでしょう。しかし、この活性の確認の部分はメタボローム解析のノウハウがないと一朝一夕にはできるものではないでしょう。

横浜市大、天然甘味成分の酵素遺伝子を発見 大量生産に道

9月9日8時49分配信 産経新聞

 砂糖の150〜300倍の甘さを持つ低カロリーの天然甘味成分「グリチルリチン」を作る酵素遺伝子の一つを、 横浜市立大学理化学研究所などのグループが突き止めた。医薬品としても需要があるグリチルリチンの大量生産に道を開く成果で、 米科学アカデミー紀要(電子版)に近く、論文が掲載される。

 グリチルリチンはマメ科植物のカンゾウ(甘草)の根や地下茎に含まれ、肝機能補強や抗ウイルスなどの効果も知られる。

 横浜市立大・木原生物学研究所の村中俊哉教授(植物生理学)らは、カンゾウの根と地下茎で活発に働き地上部ではほとんど働かない遺伝子の中から、4段階からなるグリチルリチン合成の最初の段階で働く遺伝子を特定した。2番目の遺伝子もほぼ明らかになっているという。

 栽培種のカンゾウでは、グリチルリチンの蓄積量が少なく甘みが足りないうえ、収穫までに数年を要する。
野生種は乱獲で絶滅が懸念されている。今回の成果は、栽培種の品種改良や人工合成につながると期待され、村中教授は「第一歩だが、全部の遺伝子の特定も間近」と話している。

 グリチルリチンの大量生産・・・までは、全合成経路の再構築ができないとなかなか難しいところ。また、製造にあたっては遺伝子組換え技術が使われることになるでしょうから、食品安全委員会の評価が前提になります。

 天然のカンゾウの採取による環境破壊も馬鹿にならないご時世なので、間接的に遺伝子組換え技術が環境保全に貢献することになるのでしょうか。

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