朝日新聞より。誤報であることを切に祈ります。

最新技術の「芽」つかめ 「覆面調査員」制度を新設へ

2008年9月20日15時0分 

 政府の総合科学技術会議(議長・福田首相)は、国内外の学会にたえず参加しているような第一線の科学者や技術者を「覆面調査員」に指名する新制度を設ける。世界の最新研究動向や有望な技術革新の「芽」について、いち早く報告を寄せてもらい、追加予算の重点配分に生かすなど、日本の国際競争力を高める狙いがある。

 調査員の正式名は「革新的技術推進アドバイザー」。調査対象の分野を熟知するだけでなく、世界に人脈を持つ大学や企業などの「目利き」の研究者が候補。100人程度を選び、今秋に委嘱する。所属機関のしがらみに縛られたり、働きかけを受けたりするのを避けるため、メンバーは公表せず、活動内容にも守秘義務を課す方針だ。

 調査員は、人の新型万能細胞(iPS細胞)や高効率な新型太陽電池など、 社会や産業に大きな影響を及ぼしそうな研究動向を総合科学技術会議に報告する。iPS細胞のような飛躍的な進歩が起きた時や日本が優位な分野で海外の追い上げが激しいとわかった時には、同会議が国内研究チームに1件あたり数億から10億円程度の研究費をすばやく追加投入して研究を加速させる。設備の充実だけでなく、海外の有力研究者を引き抜くことも考えている。

 資金枠として文部科学省が140億円を来年度予算概算要求に盛り込んだ。ただ、一歩間違えば恣意的(しいてき)な判断や無駄遣いにつながりかねないため、運用ルールが慎重に検討されている。(安田朋起)

 おっかしいなぁ、この第一線の科学者や技術者っていうのを誰が選考するんだろ?まさか文部科学省の推薦?
 今でも文部科学省には助教・準教授クラスに調査業務を委嘱する学術調査員という制度はある。それとは違うのだろうな。

 大体、「第一線の科学者や技術者」っていうのは、こんなことをやってられないほど忙しいのではないだろうか。しかも、こんなのを引き受けちゃうと自分にはファンドつけられないし。
 調査のための国際学会に参加するための出張旅費なんてどうやって処理するんだろう。”出所不明”の公的資金?それとも個人の銀行口座に、なんにでも使える掴み金として振り込む?こういう業務を上司の了解なく引き受けることはできないだろうから、研究室内や上司の管理職には知れるだろうし。匿名性を担保するのも大変だろう。

 まして、”日本の国際競争力を高める”狙いで”海外の有力研究者を引き抜く”?何を言ってるのかぜんぜん理解できない。海外の研究者に、折角の知的財産権を「日本においていけ」というのだろうか。それとも海外の優秀な研究者のために日本でラボを設けてあげるのだろうか?
 分野によっては日本で研究するメリットもあるのかも知れないが、研究補助の人材(専業のラボテク。日本ではパートさんくらいしかいない。)や研究の支援体制(調達一つとっても、一般競争入札になるとそのたびに数ヶ月ロスする)、年度を越えたり費目を移用したりという予算の弾力的運用、試薬や機械の価格(日本では妙に高い)etc.、他にも遺伝子組換えやRIの利用に関わる規制も厳しいなど、日本で研究しないで済む第一線の研究者が海外に流れていく理由なら山ほど思いつく。そのせいで、制度上不適切な随意契約や、産総研や放医研のように業者に研究資金をプールするケースが後を絶たないのだ。

 いくら金だけ積んでも現在のような研究環境が改まらない限り、そう簡単に研究が進むことは無い。今の日本の研究環境では、伯楽だけ用意しても名馬を飼い殺しにしてしまう恐れがある。

# ちなみに、私、仮に「覆面調査員」を委嘱されてもお断りいたします。そもそも、第一線の研究者じゃないし(爆)

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