ビールの醸造に使われる酵母の種(species)は、一種類ではない。

 ビールにもエールとラガーという異なるタイプのものがある。発酵の方法がエールは上面発酵、ラガーは下面発酵と発酵のさせ方が違うことは良く知られている。酵母の側からみれば生育環境が違うということでもあり、それぞれの生育環境に適応している酵母の種も違っている。

 エールを作るのは、Saccharomyces cerevisiae。ラガーを作るのはS. pastorianus.

 S. pastorianusゲノム解析の結果、ビール酵母はパン酵母(S. cerevisiae)とワイン酵母(S. bayanus-related yeasts)の雑種に起源することが明らかになってきた。しかも、その雑種形成は少なくとも2回、独立に起こっていたと考えられる・・・とのこと。論文はこちら
 雑種形成の際の二種類のS. cerevisiaeのご先祖様までほぼたどり着いた、と言うところがすばらしい。

 なお"we have determined that the most likely S. cerevisiae ancestral parent for each of the independent S. pastorianus groups was an ale yeast, with different, but closely related ale strains contributing to each group's parentage."と言うわけで、ラガー酵母のご先祖様のS. cerevisiaeもまた、一生懸命エールを作る酵母だったのか。

 パン酵母有性生殖する。おそらく、ビール酵母も。とすると、最初からある程度の規模で雑種形成が起こらないと有性生殖はできないのではないかな?しかも、そのような雑種形成が歴史上二回以上おこったのか。

 ・・・それを人が選抜して、麦芽を醸すことがなければ、あの素晴らしいラガー・ビールも生まれなかった訳で。酒飲みの飽くなき探究心に乾杯!です。

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