私なら表題のような見出しを付けます。また意図的な毒物混入の疑いです。朝日新聞より。

検査4度くぐる 農薬冷凍インゲン 異常検出されず

2008年10月15日14時5分

中国製冷凍インゲンを食べた東京都八王子市の主婦(56)が体調不良を訴え、基準値の3万4500倍にあたる農薬ジクロルボスが検出された問題で、該当する商品は国内外の会社や検疫所で実施された計4回の検査を受けて流通していたことがわかった。

 輸入したニチレイフーズと販売したイトーヨーカ堂の担当者が15日、厚生労働省で記者会見し、明らかにした。

 ニチレイフーズが輸入した「いんげん」(250グラム)を製造したのは、中国の北緑食品(黒竜江省)と煙台北海食品(山東省)。

 北緑食品の農場で原料を収穫し、残留農薬の検査をした後、洗浄などを経てゆでて仮包装。煙台北海食品に送られ、同社が残留農薬の検査を実施した。中国国内での輸出前検査を経て出荷され、いずれの段階でも異常は報告されていなかったという。

 国内の検疫所でも抜き取り調査は実施されているが、該当する種類のコンテナが含まれていたかどうかは不明。その後、ニチレイフーズでも自主検査を実施したが異常はなく、同社の担当者は「(生産段階での)混入は考えられない」としている。

 主婦がイトーヨーカドー南大沢店で購入した11日には計46個が販売され、同店はこれまでに38個を回収。15日正午現在、主婦が食べた商品以外に農薬検出の報告はないという。

何度も報道されていますが、抜き取り検査はロットの代表値しか調べられないので、このような希なケースを検査で阻止するには全数検査をするしかありません。しかし、食品の毒物を非破壊で検査する方法は現在ありませんので、検査で毒物の混入を阻止するのは不可能です。しかも、大半の冷凍インゲンにはそもそも高濃度の殺虫剤は元々含まれていないので、「農薬冷凍インゲン 異常検出されず」というのも当たり前のこと。何を考えてこのような見出しをつけたのか、朝日新聞社の理解力を疑います。

「検査4度くぐる」と言う言い回しは、読者の不安を煽る以外に何の効用も持ちません。検査が5度だろうが100度だろうが、抜き取り検査では散発的な出来事の検出は不可能なのですから。

毎日新聞では次のように書いています。

 残留農薬の有無については、まず収穫前の原料検査を実施、その後、製品化されるまでに2回行い、日本への輸入後も複数回行われるという。しかし、いずれの検査も一部のサンプルを調べるだけで、今回問題となった「いんげん」は検査をすり抜けた可能性が高いという。

残留農薬のように、ロットを構成する原材料全体に同程度に農薬が残っていることが予想される場合には、抜き取り検査、あるいはサンプル調査と言っても良いですが、それで対応できます。繰り返しになりますが、全数調査は無理です。検査試料は粉砕しなくてはいけませんので、農薬の抽出過程で食べ物では無くなってしまいますから。

その範囲では、ニチレイフーズの検査態勢は間違っていないでしょう。検査の信頼性については判断材料がありませんので何とも言えませんが。

食品に限らず、製品の安全を担保するのは、結局の所、消費者に良いものを届けたいと願う食品の作り手の「志」しかありません。厳罰主義で製造現場を縛ろうとする考え方では対応を誤ります。

残念なことではありますが、今回のように作り手の良心を信じられない事態に至った場合にはもう、そこから製品を調達するのはあきらめるほかありません。

それにしても、ギョーザ事案の教訓でしょうか、製品の撤去、事実関係の公表・消費者への呼びかけ、工場への聞き取り調査、製造工程の洗い直しなど、まだ完了していない部分はありますが、12日の事故発生から殺虫剤の検出・公表までの今回の行政の対応はきわめて迅速です。

ただ、ジクロルボスのリスクに関する報道はお粗末。基準値の何万倍という言い回しを相変わらず使っています。マスコミにももう少し学習していただきたいものです。

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