ロイター通信より。

英研究チーム、がん予防効果の紫色トマト開発

10月28日7時25分配信

 [ロンドン 26日 ロイター] 英国の研究チームが26日、がんの予防効果があるという紫色のトマトの開発に成功したと発表した。遺伝子組み換えによって作られたこのトマトは、マウス実験でその効果が確認されたという。

 英国政府が資金援助を行う「英国ジョン・イニス・センター」の植物生物学者、キャシー・マーティン氏が率いる研究チームが、専門誌「ネイチャー・バイオテクノロジー」で発表した。

 新たに開発されたトマトには、通常ブラックベリーなどの濃い色のベリー類にみられる栄養素アントシアニンが含まれている。アントシアニンには、がんや心臓疾患などのリスクを下げる効果があるとされる。

最終更新:10月28日7時25分

普通は”ジョン・イネス・センター”と呼んでますが。

詳しくは論文を当たるべきですが、とりあえずわかっている情報ではキンギョソウのアントシアン合成系の遺伝子を導入して果実で発現させているとのこと。

こちらに写真が載っています。

(EurekAlart!より)
結構な紫色です。このくらい色が濃いとおそらく渋みというかエグ味というか「アントシアンの味」が出てしまうと思います。紫サツマイモの極濃紫色の品種もふかしただけで食べてみると、エグいのですが。

こちらによれば、Professor Cathie Martinは"And certainly the first example of a GMO with a trait that really offers a potential benefit for all consumers. The next step will be to take the preclinical data forward to human studies with volunteers to see if we can promote health through dietary preventive medicine strategies."

次の前臨床試験(=動物実験)で安全性や効果を確認するまでは良いのですが、その次の段階で"dietary preventive medicine strategies"というのはどうなのよ!?という感じがします。だって、ガンの予防効果でしょ?コントロールの人はどうするの?とか、発がん誘発は非人道的なのでやらないとすると、自然にがんが発生するまで長期追跡試験をするのでしょうか?

現実的には、非常に難しいアプローチになると思います。なお、日本では医学的な効能・効果を標榜すると医薬品になるらしいですし。

ところで、トマトは品種によっては果皮にアントシンを蓄積するものがあります。桃太郎のような日本でポピュラーなピンク系のトマトでは若干アントシアンを蓄積します。また、黒トマトと通商される品種では、もっと色の濃いアントシアンを果皮や種子周辺にため込みます。

つまり、トマトは本来、アントシアンの前駆物質までは、最初から持っていて色素合成の遺伝子も品種によっては持っている。あとは、合成酵素を異所的に発現させればOKという状況だと思うのです。となると、この技術のブレークスルーはアントシアンの”歩留まり”にあるように思います。結局、どれだけ高濃度か?という。

しかし、なんですね、以前PNASに遺伝子組換えでカルシウムを沢山貯蔵させたニンジンを作ったという論文を見ましたが、そのカルシウム含有量は食品成分データベースで調べた小松菜の価よりも低かったので驚いたことがありました。このトマトのアントシアンも、紫サツマイモのそれよりも多くなければ、わざわざ遺伝子組換えでこのような作物を作る意義は薄いのではないでしょうか。

# そう思うのは、私が小松菜もサツマイモも食べる日本人だからかもしれませんが。色々な食材が食べられるのは実にありがたいことなのです。

実は日本人が日々食べている食材の種類はかなり多様です。個々の食品のもつ栄養的な利点をとらえて比べてみると、遺伝子組換え技術で何か他の作物を無理矢理改変してみても、特徴ある食材の水準を上回るのはなかなか難しいのではないかと思います。

ま、欧米人に無理矢理、小松菜や紫サツマイモを勧めても食べないでしょうから、こういう研究もよいのでしょうね。

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