年末に新聞を見て以来なんだかモヤモヤしていた問題がある。12/26 の朝日新聞より。

社保庁ヤミ専従、背任容疑で40人告発 厚労省

2008年12月26日20時45分

 無許可で勤務時間中に労働組合活動に携わる「ヤミ専従」問題で、厚生労働省は26日、ヤミ専従をしていた社会保険庁職員16人と、事情を知りながら給与を支払うなどした上司ら24人(うち退職者10人)の計40人を背任容疑で東京地検に告発したと発表した。現在、社会保険事務局の課長や社保事務所長をしている現職職員も含まれている。

 16人がヤミ専従をしていたのは97〜05年ごろ。当時の勤務地は東京10人、京都1人、大阪5人。給与支払いなどの関係者は東京12人、京都2人、大阪10人で、うち8人は社保事務所長だった。仕事をしていないのに給与を受け取ったり、支払ったりしたことなどが背任罪にあたると判断した。

 記者会見した厚労省の唐沢剛人事課長は告発の理由を、「国民の負託に応える公務員であることや、年金業務への信頼を裏切ったことを重くみた」と説明した。

 社保庁の内部調査や第三者による調査委員会報告でヤミ専従が確認できたのは34人いたが、告発は5年の時効にかからない16人とその上司らとなった。34人のうち30人がヤミ専従期間に不正に受け取った給与は総額8億3千万円で、すでに95%は国に返還されている。

社会保険庁労働組合は、全国社会保険職員労働組合民主党の支持基盤の一角である自治労に加盟している組合の中でも大きな組織だ。

で、在籍専従というのは本来、身分は職員(厚労省なら国家公務員)のまま、休職扱いで労働組合運動を行うもので、その間給与もなければ専従の間のベースアップもない。従って、生活費などは労働組合から支給される。普通の職員にとってはちっともあるがたくないもののはずだ。

ヤミ専従というのは給与は国費から支給された状態なのに、本来の業務ではなくその代わりに組合活動のみを行う者を言う。

で、上の記事ではヤミ専従であった職員と、その監督をすべき上司が罪に問われているのだが、何かしっくり来ない。なにがおかしいのか考えてみると、ヤミ専従になった個人も上司も休職の手続きを執らなかった責めはある。しかし、ヤミ専従として働いていた間、その職員の事実上の上司は、労働組合の書記長等組合の上位者であって、彼らはヤミ専従であった職員が組合活動のために働いていることを知っており、同時に組合が生活費を支給していなかったことも知っていたはずである。労働組合は、本来自らが支給すべき生活費等の手当を、不正にかつ組織的に国に肩代わりさせていたのではないか?

Wikipediaによれば、

全国社会保険職員労働組合の高端照和委員長は「私も無許可専従者の1人。違法行為で国民の信頼を裏切った」と謝罪して委員長職の辞任を表明した。全国社保労組の上部団体である自治労は「年金制度に対する信頼が揺らいでいる中で、上部団体として責任を痛感する」と謝罪し、ほかの単組についてもヤミ専従を行わないように徹底指導するとの金田文夫書記長名の談話を公表した。”

とある。つまり、全国社会保険職員労働組合は黙認と言う形で、違法行為である”ヤミ専従”への組織的な関与を認めている。組織的に行われてきた”ヤミ専従”という立場にあった職員が処罰されるのであれば、彼らを実質的に使用していた労働組合もまた処罰されなければおかしいだろう。でなければ、労働組合によるトカゲの尻尾切りではないか。

国が労働組合を告発しないのは、まだ準備中なのか、あるいは労働組合との取引があるためなのか(組合つぶしたと野党が騒ぐから?)、でなければ労働組合法によって法人格を与えられた労働組合は、”使用者”としての管理責任を問われないからなのかは知らない。しかし、労働組合が法的な責任を問われないで済む一方、その活動に従事した個人が全ての責任を負わされるのだとしたら、今後誰が組合の指示に従うというのだ?

きちんと精算しなければ、今後に禍根を残すし、労使共々すっきりしないだろう。

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