ちと妙なニュースを見かけたのでメモ。1/28 読売新聞より。

なじみ薄いフグ、東北6県に規制条例なし…山形で7人中毒

 山形県鶴岡市の飲食店でフグの白子(精巣)を食べた7人が意識障害になるなどした中毒事故で、店長(65)は白子料理を作ったのは初めてだった。

 フグに関する知識もほとんどなかったという。

 26日夜に中毒が起きた「鮮魚料理きぶんや」は、地元の人によると「魚料理がおいしい」と評判で繁盛していた。県警の調べに対し、店長は白子を出した理由を「常連客で以前にフグの空揚げを出したことがあり、同じ料理だと申し訳ないと思った」などと話しているという。

 さらに、「トラフグ以外の白子に毒はないと思っていた」と打ち明け、捜査員を驚かせた。実際は逆で、トラフグの白子には毒がなく、今回出されたヒガンフグの白子には毒がある。

 フグの毒に詳しい東京医療保健大の野口玉雄教授は「フグ毒の正体はテトロドトキシンという化合物。青酸カリの500〜1000倍の強い毒性があり、2ミリ・グラム程度の摂取で成人が絶命するとされる。加熱しても、分解しない」と言う。

 中毒になると、5分ほどで舌と唇がしびれ始め、次第に全身に伝わっていく。致死量を食べた場合は、嘔吐(おうと)などの末、6〜8時間で呼吸困難に陥り絶命する。解毒剤がなく、治療は毒を吐き出させ、人工呼吸器を着けるしかないそうだ。

 このため、フグの販売や調理は、都道府県の条例などで規制されている。しかし、厳しさには差がある。

 東京、京都、山口など19都府県は免許が必要で、専門の試験がある。東京の試験は、5種類のフグを選別し、20分以内に毒のある部位を取り除いて皮を引き、刺し身にしなければならない。無免許で販売、調理すると懲役などの罰則もある。一方、学科や実技の講習を受けて登録するだけでいい自治体もある。

 東北6県にはこういった条例そのものがない。山形県は要綱で資格制を定めているが、違反しても罰則はない。「東北地方はフグに対するなじみが薄く、規制の必要がないため」と県では説明する。1955年以降、山形県内で起きたフグ中毒事故は6件。すべて自分で釣るなどして家庭で調理したもので、飲食店での発生は初めてだ。

 店長は、県が定めたフグを扱うための講習を受けておらず、資格もなかった。調理師の免許さえ持っていなかった。フグは市内の鮮魚店から仕入れていたが、鮮魚店側も店長の資格の有無を確認していなかった。野口教授は「調理を資格者に任せるのは常識。その信頼を裏切る飲食店があるとは」とあきれる。

 (山形支局 古屋祐治、地方部 北出明弘)

(2009年1月28日06時07分  読売新聞)
ちなみに、食品衛生法にはこうある。

第六条

 次に掲げる食品又は添加物は、これを販売し(不特定又は多数の者に授与する販売以外の場合を含む。以下同じ。)、又は販売の用に供するために、採取し、製造し、輸入し、加工し、使用し、調理し、貯蔵し、若しくは陳列してはならない。



 (略)



 有毒な、若しくは有害な物質が含まれ、若しくは付着し、又はこれらの疑いがあるもの。ただし、人の健康を損なうおそれがない場合として厚生労働大臣が定める場合においては、この限りでない。
この事例でニュースとして取り上げるべきことは、まず有毒な食品は販売してはならないという法律に違反して食中毒事件を起こした事業者がいたということだ。条例がどうのという自治体の対応はその次ではないか?

ちなみに食品衛生法第6条違反には3年以下の懲役又は三〇〇万円以下の罰金(又はその併科)が課せられる(第七十一条)。そのほか、中毒の症状によっては傷害罪、死亡した場合は業務上過失致死にあたるだろう。

私にはどう考えても、毒物を提供した飲食店が、まず責任を問われるべき問題であるように思える。しかも、「調理師の免許さえ持っていなかった。」とおまけのように書いてある。規制条例を設けていない自治体に一切の責任がないとまでは言わないが、この見出しはあまりにセンスがないぞ。

なじみ薄いフグ、東北6県に規制条例なし…山形で7人中毒

どうよ。

ちなみに、自分で釣ったフグで中毒した場合は、食品衛生法は関係しない。食品衛生法は業に関する法律なので、販売規制で取り締まるため。その場合の所管は農林水産省キンシバイという貝による食中毒の場合は確かそうだった。

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