遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物多の様性の確保に関する法律(略称はジュゲム法・・・ではなく、カルタヘナ法)は2004年2月19日より施行されている。

今年の2月19日で、施行から丁度5年目を迎える。関係各省では当然ご存知だろうが、カルタヘナ法の附則には次の規程がある。

(検討)
第七条

 政府は、この法律の施行後五年を経過した場合において、この法律の施行の状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。

検討の結果、特段の措置が必要ないのであればそれでも良いが、その前に検討の状況はどうなっているのだろう。「所要の措置」は検討の結果を踏まえて対応することになっているので、今後、関係各省で検討が始められることだろう。注意深く見守っていきたい。

# 当事者として参加はしたくない。

この5年間、遺伝子組換え作物の第一種使用については、農林水産省で、38回の生物多様性影響評価検討会(総合検討会)が開催されており(H21,1,21現在)、その下準備のために各総合検討会ごとに2回程度の農作物分科会が行われている。

遺伝子組換え作物の評価の観点は、生物多様性保全に必要な要件について、遺伝子組換え生物(LMO)の特性+その使用方法を総合して、科学的観点から遺伝子組換え生物の特性を評価できるように定式化されており、評価過程のものの見方が大きくぶれないようになっている(カルタヘナ法施行後の評価済み作物はこちら)。

LMO自体の評価のポイントは、

1. 競合における優位性
2. 有害物質の産生性
3. 交雑性
4. その他の性質

である。

 これらの観点は、基本的にカルタヘナ法施行以前(1997〜2004年)に輸入されきたLMOに関する評価とそう異なるものではない。また、多くの遺伝子組換え作物の場合、

  1. もともとの作物が競合に弱いので野生動植物を駆逐することはない。
  2. 有害物質をほとんど生産しない(ナタネのエルシン酸など一部の例外はあるが、食用作物が有害物質を産生することはあまりない)。
  3. 日本在来の野生植物とは交雑しない(ダイズは例外。ただし交雑はするが、極めて希にしか発生しない。西洋ナタネと交雑する野生植物は知られていない)。
  4. その他の性質については、特に該当するものはない。

という評価であり、作物種としてはトウモロコシ、ダイズ、ナタネ。導入された遺伝子としては、Btトキシン(殺虫タンパク質)、EPSPS(除草剤耐性)、bar(除草剤耐性)。これらの組合せでは、上記の1.-4.については、今後も基本的な科学的評価結果が大きく変わることは余りないと予想される。

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 カルタヘナ法の施行から5年、それ以前の使用実績とあわせると、10年間以上に亘って科学的な観点から遺伝子組換え作物についての個別の評価を行ってきたのだから、そろそろこれまでの事例を鳥瞰的に評価してみる時期ではないだろうか。”シンクタンク(事務局) + 評価委員の先生(大学や独法)”で、いわゆるメタ・アナリシスを行い、流通と、一般ほ場での栽培について”特定の作物+遺伝子”の組合せについて包括的評価書をまとめてはどうだろうか。もっとも、隔離ほ場栽培に関しては、もう少し簡略な評価方法も可能だとは思うのだが、研究開発段階では色々な組換え体が作成されることから、今後とも個別評価が妥当だろう。

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