Natureの表紙です。

Satohiro Okuda et al., “Defensin-like polypeptide LUREs are pollen tube attractants secreted from synergid cells,” Nature 458, no. 7236 (March 19, 2009): 357-361, doi:10.1038/nature07882.   

 トレニアの花粉管を誘引する物質の正体が、システイン・リッチな70アミノ酸そこそこのペプチドであることを明解に示した論文。著者らは、このペプチドをコードする遺伝子をLUREsと名付けました。蛍光色素で示したしこの物質の位置めがけて花粉管が折れ曲がる様に急カーブしている写真が非常に印象的です。いやぁ、これはGJです。

 トレニアという植物のLUREsを単離したのですが、近縁の植物の花粉はこのペプチドには反応しないとのこと。また、非常に進化速度が早いので(その結果アミノ酸配列の相同性が急速に失われて)植物種間での系統解析ができないとか。

# 種間交雑がやたらとおこらない理由の一つもそのあたりにありそうです。

 他の植物も、おそらくは同様の機構で花粉管を誘引しているのでしょうが、それを検証するのは非常に難しそうです。というか、物質の本体がペプチドだと見当がついているのであれば、あとはチカラの勝負でしょうか。

 こうなってくると、花粉管の先端あるいは、そのちょっと後ろに局在するであろう受容分子はどうなっているのか?とか、どうやって花粉管を曲げるのだ?とか、in vitroでは誘引を起こさない理由になっている原因物質は何か?とか、この発見は、今後いろいろな問題の解明に波及していくでしょう。

 個人的な興味としては、受容分子がタンパク質でるとすれば、その遺伝子も又LUERsと協調的に進化しているはずなので、その多様性の広がり方に興味があります。

# これって、花粉側の受容体とペアで揃えれば、遺伝子組換え作物の受粉制御ができてしまうんじゃないだろうか。つまり、同種の植物に対しても花粉管が誘引されないが、同じ種類の組換え体だけには花粉管が誘引されるというシステムだ。

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