ホントに民主党はこんなことを言ったのかな。

食品安全委人事、参院が吉川東大教授に不同意で白紙に

 参院は5日午前の本会議で、政府が提示した6機関15人の国会同意人事案を採決し、内閣府食品安全委員会委員に吉川泰弘・東大教授を起用する案を民主党など野党4党の反対で否決し、不同意とした。

 預金保険機構理事など、ほかの14人の人事案は同意された。衆院は15人全員に同意しているが、人事案には衆参両院の同意が必要で、吉川氏の人事は白紙に戻った。

 野党4党は、吉川氏が2005年、BSE(牛海綿状脳症)問題に関し、食品安全委のプリオン専門調査会座長として米国・カナダ産牛肉の輸入再開を条件付きで容認する答申案をまとめたことを「リスク評価の姿勢に問題がある」と批判していた。

 吉川氏は委員に就任すれば、6月30日に任期満了となる見上彪委員長の後任に互選される予定だった。見上氏は新たな人事案が国会同意を得るまで、委員にとどまる見通しだ。

(2009年6月5日12時55分  読売新聞)
”米国・カナダ産牛肉の輸入再開を条件付きで容認する答申案をまとめたことを「リスク評価の姿勢に問題がある」と批判”

というが、食品安全委員会の役割はリスク評価だ。情報を収集し科学的に分析して、リスクの多少を評価する。その結果を受けて、どのように実効性のある規制を実施するかは、リスク管理を行なう厚生労働省農林水産省の役割だ。

2005年のカナダ、米国産牛肉のリスク評価結果の答申はこちら。この農林水産大臣宛の通知文には次のような但し書きが付いている。

”なお、本食品健康影響評価は、輸出プログラムの遵守を前提に行われたものであるため、貴省において、米国及びカナダからの牛肉及び牛の内臓の輸入を再開する施策を実施する場合にあっては、輸出プログラムの遵守の確保のために万全を期すとともに、遵守状況の検証結果について、食品安全委員会に適宜報告を行うようお願いします。同時に、国民に対しては、施策の内容及び輸出プログラムの遵守状況の検証結果について、十分な説明を行うようお願いします。”

つまり、食品安全委員会の評価としては「輸出国で基準どおりの製品管理が行なわれていれば安全」という前提条件つきで、それを輸出国に守らせるのと輸入するかどうかを決めるのは規制の権限を持つ農水省の役割なので、そこのところヨロシク、と回答した訳だ。

科学的なリスク評価の結果、国産牛と同程度のリスクであるという評価結果を出したことや、その間の手続きを問題視したわけではなく、「リスク評価の姿勢に問題がある」という野党の批判は一体何を意味しているのか、私にはさっぱり分からない。

この「姿勢」って何だ?なお、毎日新聞でも

民主は「吉川氏が05年に食品安全委プリオン専門調査会座長を務めていた際、牛海綿状脳症(BSE)問題で輸入が止まっていた米国産牛肉の輸入再開を事実上容認する答申をまとめた」と説明している。

とある。ここでも、食安委が「輸入再開を事実上容認する答申をまとめた」と民主党が言ったと書いてあるのだが。なんだかリスク評価とリスク管理を独立の機関に分けた食品安全基本法の成立以前の頃の話を聞かされたような気になる。

繰り返しになるが、食品安全委員会には、牛肉の輸入を禁止する権限も許可する権限も無い。食品安全委員会からどんな答申がでようと、輸入を認めるかどうかはリスク管理を行なう農林水産省の権限で決めることだ。今回の参議院の不同意は、私には八つ当たりあるいは、嫌がらせのように見えてならない。

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