セイヨウナタネと在来ナタネの自然交雑に関するニュース。朝日新聞より。

遺伝子組み換えナタネ、在来種と交雑 環境省確認

2009年8月17日7時21分


 遺伝子組み換えセイヨウナタネが在来ナタネと交雑したとみられる個体を、環境省が国内で初めて確認した。ナタネの輸入港や輸送路を対象とした昨年の調査で、三重県松阪市の河川敷から採取した個体を分析してわかった。


 遺伝子組み換えで作られ、特定の除草剤をまいても枯れなくした除草剤耐性ナタネは、年間200万トン程度輸入されるナタネの8割ほどを占める。これがこぼれて、港周辺などで自生していることは5年前から確認されてきた。


 環境省が在来ナタネと思われる個体を分析したところ、組み換えナタネの特徴である除草剤耐性に関係するたんぱく質が検出された。その種子から育てた芽にも除草剤耐性を示すものがあり、染色体数が29本で、在来ナタネ(20本)と組み換えナタネ(38本)の中間だったことから、交雑によると考えられた。


 環境省外来生物対策室は、「組み換えナタネの利用承認の際に交雑の可能性は予想されていた。在来ナタネも元は外来植物で日本産の野生種と言えない」などとして生物多様性に悪影響を与える事例とはみなしていない。


 一方、組み換えナタネの監視を続ける河田昌東・遺伝子組み換え情報室代表は「組み換えナタネがはびこってしまってからでは、悪影響があった場合に回復不能となりかねない」と対応の必要性を主張している。(米山正寛)

環境省の報告はこちら。結論の肝心な部分は以下の通り。

除草剤耐性の遺伝子組換えナタネは、除草剤耐性であること以外は、一般のセイヨウナタネと生育特性等に差がないことが確認されているためです。従って、除草剤耐性ナタネが、現在生育しているセイヨウナタネ以上に生育範囲を広げ、日本在来の野生動植物の生物多様性に影響を及ぼす可能性は考えにくいと判断しています。

このボールドから「従って」までの間には、以下のようなロジックが省略されている様に思う。
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まず、遺伝子組換えセイヨウナタネの生物学的な特性を考えれば明らかなように、除草剤耐性を持っている以外は、遺伝子組換えでない西洋ナタネと何ら変わらない、ということは、今回発見された染色体数29の雑種(F1)と見られるナタネと同様の自然交雑は、これまでもセイヨウナタネと在来ナタネの間で、長い歴史の中では、しばしば起こってきたと考えるのが妥当な推定だろう。

しかし、遺伝・育種学分野では染色体数が異なる両親(この場合、染色体数38のセイヨウナタネと染色体数20の在来ナタネ)の間では、雑種はできにくく、できた場合でも一般的には種子がつきにくく繁殖能力が低いことが知られている。

従って、セイヨウナタネと在来ナタネの間の雑種の優占化は非常に起こりにくいと考えられる。
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という推定が省略されているので、新聞記事でも、なぜ生物多様性に悪影響を与える事例とならないのかがわかりにくい。

一方、環境省の調査報告でも染色体数29の実生が雑種(?)個体の種子としてどのくらいの頻度で出現していたのかがデータとして示されていないので、どのくらい雑種が残りやすいかを推定することはできない。

今回の事例では、雑種と見られる親植物由来の実生がとれており不稔ではないことから、雑種が繁殖しにくいという論理展開は難しかったのだろう。
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休暇中は山形県下を訪れ寝たきりの老父の見舞い。疲れました。