以前、こちらのエントリーでも扱ったが、5/18-6/17の間、環境省パブコメの募集をおこなっていた”カルタヘナ法の施行状況の検討に関する意見の募集”の結果が8/28付けで公表された

・・・が、どういう訳か、日本版BCHの”お知らせ”のページからはリンクされていない。カルタヘナ法に関するポータルサイトなのだから、きちんと活用してほしいものだ。でなければ、我々規制を受ける側の人々は、環境省のサイトや文科省のサイトを定期的に見に行かなければならない。BCHから更新情報をRSSで配信してくれればよいのに。

それはさておき、意見募集の結果はこちら(pdf)。ちょっとトンチンカンなやりとりがあるのでピックアップしておこう。

[意見7]

 産業利用目的の第二種使用等においては主務大臣による拡散防止措置を受けた宿主、ベクター、供与核酸の組合せはリスク評価が終了したものとしてGILSPのポジティブリストに掲載され、それ以降の大臣確認は不要とされる。
 これに対して、研究開発目的の第二種使用等の大臣確認においては、その結果を定期的にポジティブリストにフィードバックするための仕組みが存在しない。
 研究開発目的の第二種使用等においては、作成される遺伝子組換え生物が多様であることからポジティブリストによる除外は行い難いことは推定できるが、このことが、研究開発分野の確認件数が多くなっている一因と考えられる。

[回答7]

 研究開発目的の第二種使用等については、執るべき拡散防止措置を決めるための実験分類ごとの生物のリスト等を定めた「研究開発二種告示」について、これまでも科学的知見の集積に努め、それに応じて随時「研究開発二種告示」を改正する等の取組みを行ってきているところです。今後も「研究開発二種告示」については、科学的知見に基づき、必要な見直しに努めていきます。

 意見と回答がすれ違っている。

 産業二種使用等のGILSPリストにはこう書かれている。

 産業上の使用等に係る省令に基づく告示(GILSP遺伝子組換え生物等リスト経済産業省告示)

 つまり、遺伝子組換え生物 (LMO)として”宿主、ベクター、供与核酸の組合せ”のリスク評価が終わったものとしてポジティブ・リストを公表して、大臣確認の対象から除外している。意見7もこれを踏まえた内容になっている。

 一方、回答7では「研究開発二種告示」に触れているが、これはLMOのリスク評価ではなく、宿主と核酸供与体としての生物のリスク評価結果であり、最新の知見で毎年のようにアップデートされている。

 研究開発二種使用等で大臣確認(リスク評価)されたLMOについては、第一種使用等のように評価結果が公表されておらず、評価済みのLMOのポジティブ・リストを作成して、リスク評価済みのLMOとして大臣確認の対象から除外する手続きも行われていない。

 従って、既にリスク評価済みのLMOであっても、確認された場所と違うところで使用する場合や、ユーザーが代わった場合には、いつまでたっても大臣確認を取らなければ使用できないことになる。それが、意見7で言及された「研究開発分野の確認件数が多くなっている一因と考えられる。」という考察に結びついているのだが。

 つまり、文科省の大臣確認申請によって得られた知見を踏まえて、評価済みのLMOを大臣確認から除外するとともに、評価済みのLMOに対して執るべき拡散防止措置を割り当てられるように省令を改正しない限り、研究開発二種使用等の大臣確認の件数は今後とも減る見通しは立たないのだ。

 こんな風に、意見はLMOの評価結果のアップデートの方法を問題にしているのに、回答の方は生物のリスク評価のアップデートが実施されていることを答えている。これでは話が噛み合わない。

# このまま続けると、人的コストの割に効率が悪い施策だと思いませんか?

[意見20]

研究開発等分野の第一種使用規程の承認件数が尐ないことについて、表に出さずに研究しているのではと疑念がもたれる。

[回答20]

現在までのところ、研究開発分野における第一種使用等における不適切な使
用事例は確認しておりませんが、引き続き、法令の周知等により、適切な使用の推進を図ります。学術研究目的での承認申請がしにくく、研究の妨げになっているのではないかとの懸念も示されていることから、報告案16ページ「研究開発として行う第一種使用に関し、産業利用における第一種使用との使用の態様の違いを踏まえた評価を行っていく必要がある。」との検討結果を踏まえた対応を行っていく必要があると考えております。

 orz.....である。

 法令違反覚悟でこっそり研究しても、いずれは論文に書かないと成果にはならない。で、明るみに出た途端に、文科省環境省から立ち入り調査でみっちり絞られたり、場合によっては刑事事件として書類送検されたり、告訴されたり、研究費の返納を求められたり、公的研究費の応募資格を止められたり、大学であれば学内の実験が全面的に止まったり、そのせいで他の研究者から白い目で見られて恨みを買ったり、それはもうひどい目に遭う可能性があるので論文と引き替えにそのようなリスクを取る研究者はまずいない。

# 研究者の社会的な信用が低いのかな。だとしたら残念なことである。

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