タンパク質の相互作用を調べるのに、Yeast Two-hybrid system (YTH)が使われてきた。もともと転写因子など核タンパク質の相互作用を調べるためのシステムなのだが、トウモロコシの種子貯蔵タンパク質間の相互作用解析などにも応用範囲は広がってきている。

だが、原理的に核移行シグナルを持たないタンパク質の相互作用解析には向いていないはずであり、その点の克服を意図してLexA-VP16を利用したシステムも開発されている。

近年、緑色蛍光タンパク質GFP)を2つの部分に分割すると蛍光を発しなくなるが、再び会合させると蛍光を発するようになる性質を利用して、bimolecular fluorescence complementation (BiFC) というタンパク質分子間の相互作用を調べる実験系が開発されている。

Barnerdら酵母の任意の核遺伝子のC末端側にGFP分子の一部を導入するベクターシステムを開発した。図で見るとこんな感じ酵母の複製開始点を持たないタイプのベクターでNBRP酵母のサイトから入手できる。

出芽酵母の栄養素要求性ura3やtrp1を相補するのに近縁の酵母Kluyveromyces lactis由来のURA3やTRP1をマーカーとして使用している。これらのサイトで予定外の相同組換えがおきることを防ぐ意味で有効な手段だ。選抜
は、Trp, Uraで行えば2つの遺伝子のC末端側にGFP分子の一部が導入された株が単離できる。
この論文では、酵母本来のオルガネラでの局在の異なるタンパク質遺伝子にsplit-GFPを導入してタンパク質の局在が一致して相互作用が見られる場合に緑色蛍光が観察されることが示されている。

相互作用を調べたいタンパク質の細胞内での局在が自由な所は、これまでのYTHにはない自由度の大きさだ。

一方、この論文のシステムでは酵母のタンパク質に専ら焦点を絞っており、異種生物のタンパク質には着目していない。ある意味、ライブラリーをスクリーニングできるYTHに見られる規模のメリットには目をつぶっているとも言える。使い分けが肝心と言うことか。

古典的なYTHのベクターのGAL4の代わりにsplit-GFPを入れると比較的簡単に汎用型のBiFC検出システムが作れそうだ。

この論文
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18493658?ordinalpos=2&itool=EntrezSystem2.PEntrez.Pubmed.Pubmed_ResultsPanel.Pubmed_DefaultReportPanel.Pubmed_RVDocSum

では、恐らく酵母用の発現ベクターにsplit-GFPを組み合わせている。残念ながらAbstractしか読めない。

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